火山とコーヒーの秘密〜パナマ(2022年9月)

最近のこと、東南アジアの日本?

 記録的な猛暑が続いた今年の夏でしたが、気づけば蝉の鳴き声も静まり、日が沈みと秋の虫の音が響いています。私は今年の8月に、インドネシアへ行きましたが、暑い東南アジアの代表のようなジャカルタの暑さは「なんだ、日本とそんなに変わらないじゃないか」と思えてくるほどで、日本の猛暑の激しさを肌で持って感じました。そして、日が落ちた後のジャカルタは、むしろひんやりと涼しく感じるくらいでした。この寒暖差が妙に心地よく感じました。

火山灰とコーヒーの切っても切れない関係

 2022年9月のコーヒーは南米パナマからです。パナマ最高峰のバルー火山周辺斜面の農園から届きました。火山灰土壌は、コーヒーの名産地の一つの条件です。

 有機物を多く含む火山灰の土壌は、コーヒー豆の成長に欠かせない窒素、リン酸、カリウムが豊富に含まれてます。そして、水はけも良いです。海底火山の噴火で生まれたハワイ島のコナ、タンザニアの火山キリマンジャロ、ジャマイカのブルーマウンテンなど、言わずと知れたコーヒーブランドは火山灰の土壌という共通点があるのです。

 コーヒーの産地が標高の高い山にあるのがなぜだろう、と思ったことがあるかもしれません。一つの理由は昼夜の寒暖差です。特に夜の気温が低くなると、コーヒーは種子内に糖類を蓄えることで自らが凍ってしまうことを防技ます。この際に蓄える糖類が、コーヒーのフレーバー・風味に欠かせないと言われています。

 そして、この火山灰土壌で豆が良く育つというのも、もう一つの理由なのです。

その味は、お菓子のよう

 とてもバランスがよく、飲みやすいです。まるでおやつをもぐもぐと楽しむような風味です。べリー感のある、くせのない酸味が心地よく、後味も大変すっきりとしています。

—-風味バランス—-

苦味 ★☆☆

酸味 ★★☆

コク ★★☆

甘味 ★★☆

焙煎 ★★☆  

フレーバー:ベリー、カカオ

エルサルバドルの幸せと悲しみの果実〜2022年8月限定コーヒー

最近のこと

 8月も猛暑が続いています。38度を超えるような日もあり、外を歩くと息苦しさを覚えます。先日、私はインドネシアのジャカルタへ出張しましたが、日中の暑さは、日本と変わらないですが、朝や夕方の時間帯は、むしろ東南アジアのジャカルタの方が涼しいとすら感じました。

 学校は夏休み期間ですが、私の子供の頃、真夏でも外で思いっきり遊ぶ、ということは当たり前でしたが、こんなにも暑くなってしまった今日においては、真夏は室内の涼しいところで過ごす、というのが新たな常識となるのでしょうか。

 さて、8月限定コーヒーはエルサルバドルから、「SHGエルグァモブラックハニー」です。

エルサルバドルとは?

 エルサルバドルは、中米七カ国の中で最も小さい国で、その面積は九州の約半分と同じくらいです。グアテマラとホンジュラスの間に位置し、火山や湖が点在しています。サトウキビやコーヒーなどの農業と輸出が主な産業となっています。

Googlemapより

幸せと悲しみの果実〜コーヒーと内戦

 エルサルバドルのコーヒーは、「幸せと悲しみの果実」と言えるかもしれません。1880年代頃からコーヒーが主要な農作物になりましたが、1930年代の世界恐慌によってコーヒーの価格が暴落し、貧困に喘いだ農民の不満が爆発して、1932年に大規模な農民蜂起(La Matanza)が起こりました。約3万人の農民が亡くなったと言われています。

 その後、コーヒー生産は衰退しましたが、1970年代からヨーロッパ移民がコーヒー生産を再興し「14家族(Catorce Familias)」と呼ばれる寡頭支配層によって発展しました。彼らはコーヒー生産によって大きな富を得て、多くの農地を支配し、農村部の小規模生産者は労働者となりました。

 支配層との格差による不満が引き金となって、エルサルバドル内戦が発生しました。聖職者を中心とした農民解放をうたう左派と「14家族」の資金援助を得た右派が争ったこの内戦は、1992年に国連によって和平合意が成立するまで十年以上続きました。

 内戦がエルサルバドルにもたらした被害は壊滅的でした。12年間におよぶ内戦で約5万5千人が命を失いましたが、この和平協定によって、エルサルバドルのコーヒー産業は新たな道を切り開きました。

 アイーダの挑戦 コーヒーのゴミが宝になる時 ~エルサルバドルカスカラティー

ブラックハニーとは

 エルグァモブラックハニーは、エルサルバドル最西部に位置するアワチャパン県タクバ市にあるエルグアモ農園から届きました。

 コーヒーチェリーの精選処理ではウォッシュドというチェリーを水洗いして、果肉を除去した状態で乾燥させる方式が主流となっていますが、

 この際に、ミューシレージと呼ばれる豆を覆う粘液質部分だけ、残した上で、乾燥させる方式をハニープロセス(パルプドナチュラル)という方法があります。

 ハニーと呼ばれるのは、粘液質の果実の甘みが、豆に浸透することで蜂蜜の風味が出るためと言われています。

 粘液質をどのくらい残すかで豆の見た目が変わり、完全に残すと、黒く、半分くらいだと赤く、薄いと黄色くなるため、ブラックハニー、レッドハニー、イエローハニーと分かれます。

 ミューシレージと呼ばれる粘液質を残した状態でゆっくりと乾燥させます。独特で濃厚な甘みとジューシーさを兼ね備えたコーヒーです。

ザンビアのイエローコーヒー記事

前回のエルサルバドルコーヒーはこちら

味について

 コーヒーを淹れた瞬間から、カップから黒糖とメープルの甘い香りが漂ってきます。

口に入れると甘さと一緒に酸味が飛び込んできますが、それは柔らかく、後に残りません。

香ばしさとコクもしっかり感じられ、後味もすっきりしてとても飲みやすいです。

—-風味バランス—-

苦味 ★☆☆

酸味 ★★☆

コク ★★☆

甘味 ★★☆

焙煎 ★★☆  

フレーバー:黒糖、メープル、檜

ボリビア コーヒーの学校

2022年7月の限定コーヒーは、ウガンダから、「ソル・デ・ラ・マニャーナ ウォッシュド・カツアイ」です。

●ボリビアのコーヒーについて

まずはボリビアのコーヒーについて紹介したいと思います。ボリビアは南米大陸に位置し、国土の30%以上をアンデス山脈が占めています。ボリビアの首都である「ラパス」は、標高が3500mもあり世界一高い首都と呼ばれ有名です。

コーヒー生産地として最も有名なブラジルやペルーに隣接していて、コーヒー栽培に適した地形や気候となっています。

ボリビアのコーヒーの歴史についても触れたいと思います。

19世紀のスペイン植民地時代に入植したスペイン人によって始められました。当初は、首都ラパスの近くで始まりましたが、標高が3000m以上の土地が多く、土壌も痩せていたために、コーヒー栽培はうまくいかなったようです。その後、栽培をする土地の標高を徐々に下げていき、標高1000~2000mの山の斜面などで栽培されるようになると、コーヒー豆の栽培は安定し、生産量は増加していったようです。

ボリビアの中でも特に、ユンガス地方のコパカバーナ農園のコーヒー豆は質の良いものとして輸出されています。当店でも以前コパカバーナ農園のコーヒーをご提供したことがあります。

●今回のコーヒーについて

今回のコーヒーの生産農園は、アグリカフェ社です。アグリカフェ社は、ボリビアで35年の歴史のある家族経営のコーヒー生産会社で、1986年にペドロ・ロドリゲス氏によって創業されました。

スペシャリティコーヒーと呼ばれる最高品質のコーヒー豆を自社農園で栽培し、世界のロースターへ提供しています。

ボリビアの生産農家・コミュニティ支援も行なっていて、今回の「ソル・デ・ラ・マニャーナ」は、彼らの支援プログラムの柱の一つです。

●ソル・デ・ラ・マニャーナプログラムについて

コーヒー生産者の育成を目的としたプログラムで、生産者の農園の質を向上させるために必要な研修や技術を提供しています。このプログラムは、生産者のための学校として設計されており、7年の歳月をかけて卒業することができます。生産者は、苗床から始まり、植え付け、収穫、害虫予防、剪定、財務管理など、コーヒー栽培のすべてのステップを指導されます。参加者の農園の質と量を向上させるとともに、家族の生活向上を支援しています。

今回のコーヒーは、このプログラムにて生産されたものです。

ウォッシュド(水で洗ってチェリーを除去する精選方法)のカツアイ(コーヒーの品種)です。

さて、どんな味がするでしょうか。

●コーヒーのテイスティング

不思議な酸味を持ったコーヒーです。少し青草っぽい酸味と思うと、

鉄のような無機質な酸味もあります。

木の香りが優雅さを安らぎを運んでくれます。

豆の香ばしさもしっかりと感じられます。

余韻となる後味は雑味が残りますが、そこは次に期待したいです。

—-風味バランス—-

苦味 ★★☆

酸味 ★★★

コク ★★☆

甘味 ★☆☆

焙煎 ★★☆

フレーバー: 青草、鉄、濡れた木

ウガンダ ルウェンゾリ山東麓から届いたアラビカコーヒー

2022年6月の限定コーヒーは、ウガンダから、「アフリカンムーン ドンキー」です。

ウガンダはアフリカ大陸の東部に位置する、コーヒーの生産国として有名なケニアやタンザニアなどに囲まれた内陸国です。

国土は約24万㎢で日本の本州と同じくらいの広さに、人口約4,000万人が暮らしています。

国の真ん中を赤道が通っており、自然に恵まれています。その美しさから「アフリカの真珠」と呼ばれています。

やはり、農業が経済の中心で、トウモロコシやアボカドなどが作られていますが、その中でもコーヒーはウガンダの経済を支える主要な農産物の1つとなっています。

ウガンダは、実は、エチオピアに次いでアフリカの中でもNo.2のコーヒー豆の生産国です。一方、大半は「大量生産可能」なロブスタ種が80%以上と言われています。一方、一部の農園では、「手間暇がかかる」が風味がより豊かなアラビカ種の生産をおこなっています。

今回の「アフリカンムーン ドンキー」は、ウガンダで希少なアラビカ種である、「ニアサランド」「ブギス」といった品種の豆となっています。

生産地はウガンダ西部にあるルウェンゾリ山東麓にあります。標高が高く、肥沃な土壌と豊富な降雨量で、アラビカ種の栽培条件としては理想な環境となっています。

ドンキー(ロバ)が集めたコーヒーをアフリカンベッドによる天日乾燥で精選されました。ナチュラルと言われる完熟したチェリーを天日乾燥させる方法、チェリーが乾燥によって剥がれる過程で、豆自体にその香りを甘味を残すと言われています。私もこのアフリカンベッドで乾燥させてコーヒーの甘味が大好きです。

アフリカンベッドについてはこちらの記事をご覧ください。

豆を手に取った瞬間から、ベリーの香りが感じられます。

コーヒーを淹れて、鼻を近づけると、ベリーの香りと共に、チョコレートの甘味もほんのりと感じられます。

その味は、クリーンでいて、しっかりと香ばしさと旨味を感じられますが、

余韻は、一切の雑味を残さず鮮やかに、削った木の穏やかな香りが漂います。

—-風味バランス—-

苦味 ★☆☆

酸味 ★☆☆

コク ★★★

甘味 ★★☆

焙煎 ★★☆

フレーバー: ベリー、檜、カカオ

パプアニューギニア〜7000年前、世界で初めて農業が生まれた場所

2022年5月の限定コーヒーは、パプアニューギニアから「グレード Y1」です。

パプアニューギニアは太平洋の島国です。日本からはるか南に、オーストラリアの北の赤道付近にあります。

もともとは、ニューギニア島という世界で2番目に大きな島があり、その島の東半分がパプアニューギニアで、西半分はインドネシアとなっています。

パプアニューギニアのコーヒーの歴史は浅く、1930年代にヨーロッパ人の宣教師によって、ジャマイカの有名なコーヒー品種である、「ブルーマウンテン」の苗木が移植されたことが本格的なコーヒー栽培のきっかけとなっています。

一方で、パプアニューギニアは、世界で最も初期に、農業を始めたとも言われています。その証拠となっているのが世界遺産に登録されている「クックの初期農耕遺跡」です。

パプアニューギニア南部の海抜1500m地点の湿地帯にある、ニューギニア島最古の農耕地であり、発掘調査では、少なくとも7000年前から耕作が行われてきたことが判明しています。

タロイモやヤムイモなどの生産活動が、開始以来一度も途絶えていない場所でもあります。約6500年前に植物採集が農業へと変わったこの場所では、初めは単なる盛り土をして耕作していました。

しかし、やがて木製の道具で溝を掘って湿地を干拓し、4000年前にはバナナの栽培も始まったことが考古学的に証明されています。これほどの長期にわたり、独自の農業の発展や農法の変化について考古学的な裏付けのある場所は、世界にも類がないのです。

写真は世界遺産公式サイトの記事より。

本コーヒーの名前である「グレード Y1」とは、グレード規格となっていて、大規模農園規格であるAA、A・・・と、小規模農園であるPSC、Y1、Y2などがありますが、Y1は小農家グレードとなっています。

何度も味わいたくなる旨味のあるコーヒーです。

果実感のある酸味は、甘味と絡んでいて嫌味がなく、きゅっと引き締まっています。

しっかりとコクがあり、香り高いです。

余韻には、豆の香ばしさがしばらく続きます。

—-風味バランス—-

苦味 ★☆☆

酸味 ★☆☆

コク ★★★

甘味 ★★☆

焙煎 ★★☆

フレーバー: オレンジ 黒糖 レモングラス

ペルー ホワイトコンドル〜ベラスコ将軍とはじまりのティピカ

2022年4月限定コーヒーはからペルーより「ホワイトコンドル」です。

ペルーは、南米西部に位置し、エクアドル、コロンビア、ブラジル、ボリビア、チリの5ヶ国に隣接しています。

ペルーにおけるコーヒーの始まりは、1700年代のスペイン植民地時代です。現在においても当時伝来された在来種ティピカが輸出される品種の70%以上となっています。

さらに、ペルーは世界でも有数のオーガニック認証やフェアトレード認証のコーヒー豆の輸出国でもあります。

ペルーのコーヒー産業における歴史的転機は、1968年のペルー革命に遡ります。ベラスコ将軍による、「反米と自主独立」を掲げた軍事革命です。

貧しい生まれだったベラスコ将軍において、革命の最大の柱は、農地改革でした。

「44家族」と呼ばれていたいわゆる寡頭支配層は、解体され、小作人に分け与えられたのです。ベラスコ将軍は先住民をカンペシーノ(農民)と呼ぶようにし、これまでの慣習であった侮蔑的な響きのあるインディオという言葉も廃止されました。

ペルーのコーヒー農園は現在も90%が小規模農家となっています。

ホワイトコンドルは、バナナやアボカドなどのシェードツリーのもとで栽培されています。

収穫は全て丁寧に手摘みし、天日干しされ、電子選別後、ハンドピックを行うことで、高品質のコーヒーに仕上がります。栄えあるコーヒー・オブ・ザ・イヤー 2021のひとつにも選ばれました。

一口飲むと、豆の香ばしさをしっかり感じることができます。

バランスに優れ、飲み終わった後に広がる香りが優雅な余韻を残してくれます。

果実感の酸味も心地よいです。

—-風味バランス—-

苦味 ★☆☆

酸味 ★★☆

コク ★★☆

甘み ★★☆

焙煎 ★★☆

フレーバー:カカオ、ナッツ

ドミニカ バラオナAA〜ガブリエルの一滴の水伝説

2022年3月限定コーヒーはからドミニカ共和国より「ドミニカ バラオナAA」です。

彼の名はガブリエル・ド・クリュー

ガブリエルは大西洋の上を何日も彷徨っていた。

目的地はカリブ海に浮かぶ美しい島、マルティニーク島、

カブリエルは、そこにコーヒーの苗を持ち込むため航海を続けていた。

ベタ凪が何日も続き、ガブリエルの船は大海原に漂流していた。

食料や水もだんだん底を着き始め、せっかく持ち込んだコーヒーの苗も、一つ二つと萎れていき、生きているのは、後一つとなってしまった。

ガブリエルの自身の飲み水も僅かとなり、もはや絶望だけが残っていました。

これまでと思うと、視界に入ったコーヒーの最後の苗木、最後の飲み水の一滴を、ふと、その最後その苗に与えました。

すると、今までの凪が嘘のように風が吹き始め、帆が勢いよく膨らみ、進み始めました。

そして、ガブリエルの視界には、マルティニーク島が現れたのです。

最後の1本のコーヒーの苗とともに上陸しました。そのコーヒーの種はティピカ。さらにこの数年後の1735年、ティピカはドミニカに持ち込まれました。

美しい景色を誇るカリブ海の産地、ドミニカ共和国。コロンブスが新世界の発見後、最初の町を建設したイスパニョーラ島。

イスパニョーラ島東部に位置する共和制国家です。小アンティル諸島のドミニカ島にあるドミニカ国と区別するため「共和国」をつけて呼ばれています。

ドミニカでは「野球」が有名です。数多くの野球場があり、プロ野球も6チームあります。
大リーグの有名選手で通算609本塁打のサミー・ソーサは、ドミニカ出身であり英雄です。現在も、大リーガーのおよそ10%がドミニカ出身のようです。


ドミニカ南西部に位置するバラオナ地方のバオルコ山脈は、石灰岩質の地盤を腐葉土が覆った土壌。山の斜面が雲で覆われることにより年間を通じて、まんべんなく雨を降らせます。

この雲が強い日差しからコーヒーの木を守り、表土に湿りを与え、コーヒーの木は育ちます。カリブ独特の軽い口当たりと柔らかな酸味と甘み、果実感のある香ばしいアロマが特徴です。

南国の果実をそのままかじったようなジューシーさと、心地よい酸味感

水っぽさやフレーバーの曖昧さも、異国情緒の中でむしろごくごくと飲みたくなる

—-風味バランス—-

苦味 ★☆☆

酸味 ★★☆

コク ★★☆

甘み ★★☆

焙煎 ★★☆

フレーバー:カカオ、ライム、とうもろこし

タイサイアムブルームーン〜世界最大のアヘン栽培地がコーヒー木に入れ替わった話

タイ最北端のゴールデントライアングルと呼ばれる一帯は悪名高い世界最大のアヘン栽培地でした。コーヒーの木がその産業を覆した話です。

2022年2月限定コーヒーはからタイより「サイアム ブルームーン」です。

タイの最北端に位置するチェンライ県ドイチャン村のコーヒーです。

チェンライは、ミャンマー、ラオスとの国境沿いにあり、一帯はゴールデントライアングル(黄金の三角地帯)と呼ばれています。

タイとラオスの間を流れるメコン川と、タイとミャンマーの間を流れるルアック川が合流し、3国が国境を接する一帯で、ビューポイントからは、雄大な景色を望むことができます。

このゴールデントライアングルが、かつて、麻薬の原料であるケシの世界最大の生産地出会ったことを知っていますでしょうか?それを知ると、ゴールデン(黄金)の意味は全く異なります。麻薬の密造も行われ、利権争うによる武力衝突などもあり、極めて治安の悪い地域でした。

ケシの栽培は、国境を行き来する、国籍を持たない山岳少数民族が担っていました。その栽培は、焼畑耕作という方法で行われていました。栄養豊富な森を焼き払った地に農地を切り拓き、ケシを栽培し、養分がなくなると、次の森を焼くという伝統的な耕作方法です。

一帯の山は焼畑耕作ではげ山になっていて、「ブラック・マウンテン(黒い山)」と呼ばれていたようです

ケシ栽培による麻薬の流通によって莫大のお金が生まれるものの、実際の栽培を行う少数民族は、貧困の中にあり、また、麻薬使用による中毒症状などの健康被害も深刻でした。

タイ王国政府は、この産業を止めようにも、一体の村民の唯一の収入手段であることから、単純な取り締まりによって解決は不可能でした。

ケシの代わりにコーヒーの木を植えよう

こう提唱したのは、1970年代当時のプミポン国王でした。王国政府が主導し、コーヒーの木の植樹から、栽培方法の指導、流通手段の確立など、地道な産業作りを続けるとともに、学校や診療所の設立など生活インフラも整備することで、ついに1990年代には、タイ国側でのケシ栽培は根絶したのです。

現在は、年間2000tのコーヒーが出荷され、高品質なコーヒーは世界でも評価されています。

麻薬産業による現地住民の貧困問題と、健康被害、インフラ問題が、コーヒーの力によって、解決された世界でも有数の成功事例と言えるでしょう。もちろん、王国政府による資金援助と地域住民、そして支援者による渾身の努力の積み重ねがあった上の成果です。

今回お届けするコーヒーは、チェンライ有数のコーヒー産地として、北部のドイトゥン村、西部のドイチャン村がありますが、今回お届けする「サイアム ブルームーン」は、ドイチャン村産で、こちらも山岳民族であるアカ族やリソー族によって栽培されました。

まだまだ、産業は始まりにあります。この成果が継続していくためには、高品質なコーヒーを現地農家が作ることで適正価格で販売され、地域経済が循環していくことが欠かせません。タイからやってきた、一杯の高品質なコーヒーを飲むことは、タイチャンライの山岳民族の貧困や社会問題解決への一票でもあるのです。

今世の中の大きなトレンドであるSDGsですが、コーヒーとSDGsとの深い繋がりを書いた本があります。ご興味ありましたら是非読んでみてください。「コーヒーで読み解くSDGs(ポプラ社)」

「サイアム ブルームーン」は、その昔、ブッダが一晩泊まったとさせる聖なる泉の水からその名が生まれました。月光が煌びやかに水面に映り、光の柱が浮かび上がるようにみえるパワースポットとされる泉があります。ラマ九世が戴冠式でも使用したとされるこの聖なる水を精選に使用しています。

香りは伸びやかに抜けて、素晴らしいです。

最初、甘酸っぱさが口の中で駆け回ります。

まろやかな風味と伸びやかな香りが良いバランスとなっています。

もう少し、コクが欲しいところですが、バランスはよく、若草の芽吹きのような立春にふさわしい味です。

—-風味バランス—-

苦味 ★★☆

酸味 ★★☆

コク ★★☆

甘み ★★☆

焙煎 ★★☆

フレーバー:黒みつ、青草、炭、フローラル

コンゴ マウンテンゴリラとアラビカコーヒーの話

新年あけましておめでとうございます。2022年1月限定コーヒーはからコンゴ「ビルンガパーク」です。

マウンテンゴリラが絶滅の危機にあるようだ。アフリカ中西部に生息し、そのDNAの98.3%は人間と同じで、笑いや悲しみといった感情を持つという。

その個体の3分の1は、コンゴの東端にあり、ルワンダ国境に近い「ビルンガ国立公園」に生息している。

この公園というと、人が集まり憩う場所というイメージだが、世界遺産に登録された7800km2 の自然は、公園というよりは野生保護区という表現が近いかもしれない。

放っておけば人間による乱獲と開発が繰り返され、野生の動植物は駆逐され、絶滅する一方であり、希少な種を「意図的に」保護するために国家により規制されている、というわけである。

しかし、この「保護区」に生息するマウンテンゴリラが絶滅しそうだという。その理由は、やはり人だ。

ビルンガ公園に隣接する隣国ルワンダでは、90年代に民族紛争が起こり大量虐殺も起きた。その頃に100万人以上の難民がコンゴになだれ込み、公園は難民キャンプとなった。そこから政治的な武装集団が生まれ、対立は公園にまで飛び火し、混乱の中でゴリラも密猟や生息地の荒廃により危機的な状況にあるようだ。

(ルワンダで起きた虐殺をテーマとした「ホテル・ルワンダ」という映画も有名)

周辺のコーヒー農家もマウンテンゴリラと同様に影響を受けていた。そもそも2,000m以上の標高、火山灰からなるミネラル分豊富な赤土、とアフリカのコーヒーベルトの中でもこの一体の土壌はコーヒー生産にとっては最高の環境であったにも関わらず、周辺の内乱や、そして適切な生産方法も販路もないために、粗悪な品質と低利益に陥っていたのだ。

ゲームチェンジが起きたのは、ファームアフリカというアフリカの農家を支援する慈善団体に大規模農業プロジェクトが始まったことだった。数々の専門家も巻き込み、本格的なプログラムが導入されたのだ。

・コーヒーとシェードツリーの苗床を設置
・作物の多様化を含む、適切な農業慣行のトレーニング
・健全なビジネスプランの育成と運転資金へのアクセス
・フェアトレードとオーガニックの認証取得
・コーヒーの品質管理、評価、コントロールに関する協同組合スタッフのトレーニング
・生産者がコーヒーの品質を監視し改善できるよう、カッピングラボの設置やマイクロウォッシングステーションのインフラと作業方法の改善
・現地の加工・保管能力の向上
・市場の開拓と確保

ビルンガ国立公園と共同で行なったプロジェクトは、EUからの資金援助を受け、本格的に実行され、また、北米の大手コーヒー卸も参画し、2020年に初めてのスペシャリティーグレードのロットが市場に出荷された。

この取り組みの成功は、公園周辺の農家と経済の安定化は、国立公園とそこで生きるマウンテンゴリラを始めとする野生保護にも大きな意味を持たらした。

コーヒーの秀逸さは、その余韻の美しさとその持続時間にあると思っておりますが、このコーヒーはその点においては比類のないものとなっています。

風味は豊かに、飲む程にフローラルな香りが優雅に広がります。

柑橘の酸味はほんのりと、深いコクが全体のバランスを引き締めます。

コーヒーをただ楽しむのに加え、ふと、紛争に荒らされたアフリカの農民やマウンテンゴリラの笑顔を浮かべると、なんだか美味しさがさらに増してくるように思えます。

—-風味バランス—-

苦味 ★☆☆

酸味 ★☆☆

コク ★★★

甘み ★★☆

焙煎 ★★☆

フレーバー:オレンジ、黒糖、フローラル

ついに西原プリンが伏見店でも始まります

西原珈琲店栄店と、本山店限定メニューとして大変人気メニューで売り切れてしまうことも多くなっております西原プリンですが、これまで西原珈琲店伏見店でも多くのお客様よりお求め頂いておりましたが、新年よりご提供することとなりました。

1月5日よりまずは数量限定にてスタートし、順次本格提供させて頂きます。

見た目はこんな感じで、四角の分厚いプリンにバニラアイスが乗っています。キャラメルソースがたっぷりかかっています。

少し横からも。この厚切り感、伝わりますでしょうか。

低温でじっくりと焼き上げています。

早速食べてみましょう。まずはバニラを乗せて一気に口へ。バニラアイスの冷たさの中に、かため食感のプリン、キャラメルソースの甘みが口の中に広がります。

お次はプリンだけで。厚切りのぜいたくな食感と卵の風味をより強く感じられます。

こだわりのコーヒーと一緒にいかがでしょうか?

Instagramでは、お客様による素敵な投稿も#西原珈琲店でチェックしてみてくださいね。