ニューヨークにブルックリンという街があります。
私がその街を知ったのは、10代の時に「スモーク」という映画を観てからです。
ブルックリンの街角でタバコ屋を営むオーギーという無骨な中年男が主人公の物語。
なんてこともない、このタバコ屋に訪れる近所の様々な人間達と触れ合い、ドラマが紡がれるですが、ハーヴェイ・カイテルが演じる、この不愛想だけどなんとも粋で愛らしいオーギーという人物に惹かれてしまう映画です。
この映画を観ているとブルックリンは下町の、名古屋なら大須、東京なら浅草な雰囲気の場所なのかなあ、と思うのですが、初めてこの映画を観たときはこの街がなんとも渋く、かっこよく思えてあこがれたものです。
3年前にブルックリンのホテルに1泊したことがあります。この時のブルックリンは、なんだか「ヒップスター(セレブや最先端の若者という意味らしい)」の闊歩する街、なんてガイドブックには書いてある、なんともおしゃれな街に変貌していました。
ニューヨークの中心であるマンハッタンの家賃高騰から逃げてきた新進気鋭のアーティストやクリエーターがソーホーを構える街、新しいカルチャーの生まれる街、、、なんだか街を歩いてもどこにもオーギーが立っているタバコ屋は見つかりませんでした。
さて、今月のコーヒーは、インドにあるブルックリンと名付けられた農園からお届けします。
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2月のコーヒーはインドから
「ブルックリンエステート」です。
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インド最南部タミル・ナドゥ州は高峻な山脈が走り、その奥深くには、
野生のバイソンが生息し、珍しい野鳥が飛び交う原生林が存在します。
ブルックリンと名付けられた農園は、霧深い丘陵の1400mの位置にあります。
この農園の歴史は1850に遡ります。モンスーンの降雨が豊かな土壌を作り出し、この土が独特のフレーバーを生み出します。
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さて、その味は、
香りは濡れた枯れ葉と燻したような独特のフレーバーが漂います。
口に含めばまずはしっかりとした苦味として、間髪おかずに酸味、
そして飲みごたえあるコクが現れます。
深めの焙煎ならではのスモーキーな香り、
まるでタバコ屋にやってくる個性豊かでくせの強いブルックリンの住人のように、
風味の一つ一つが主張しあうのが楽しい、ちょっと無骨なコーヒーです。
インドから届いたブルックリンコーヒーで「スモーク」な一服はいかがでしょう。
—-風味バランス—-
苦味 ★★★
酸味 ★★☆
コク ★★☆
焙煎 ★★☆